堤未果『ルポ貧困大陸アメリカ』岩波新書

2015.11.08(18:59)
旺盛な消費意欲によって支えられ、繁栄しているアメリカですがその裏では一体何が起きているのかを追った本です。

第1章 貧困が生み出す肥満国民(新自由主義登場によって失われたアメリカの中流家庭
なぜ貧困児童に肥満児が多いのか
フードスタンプで暮らす人々
アメリカ国内の飢餓人口)
第2章 民営化による国内難民と自由化による経済難民(人災だったハリケーン・カトリーナ
「民営化」の罠
棄民となった被災者たち
「再建」ではなく「削除」されたニューオーリンズの貧困地域
学校の民営化
「自由競争」が生み出す経済難民たち)
第3章 一度の病気で貧困層に転落する人々(世界一高い医療費で破産する中間層
日帰り出産する妊婦たち
競争による効率主義に追いつめられる医師たち
破綻していくアメリカの公的医療支援
株式会社化する病院
笑わない看護婦たち
急増する医療過誤
急増する無保険者たち)
第4章 出口をふさがれる若者たち(「落ちこぼれゼロ法」という名の裏口徴兵政策
経済的な徴兵制
ノルマに圧迫されるリクルーターたち
見えない高校生勧誘システム
「JROTC」
民営化される学資ローン
軍の第二のターゲットはコミュニティ・カレッジの学生
カード地獄に陥る学生たち
学資ローン返済免除プログラム
魅惑のオンライン・ゲーム「アメリカズ・アーミー」
入隊しても貧困から抜け出せない
帰還後にはホームレスに)
第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」(「素晴らしいお仕事の話があるんですがね」
「これは戦争ではなく派遣という純粋なビジネスです」
ターゲットは世界中の貧困層
戦争で潤う民間戦争請負会社
見えない「傭兵」
一元化される個人情報と国民監視体制
国民身分証法
州兵としてイラク戦争を支えた日本人:「これは戦争だ」という実感)

前半では公的サービスがコスト削減の元、民営化されサービスの質が大幅に低下する実情、その境遇に直面する人達の声を書いています。後半では軍事に関する部分にまで民営化の波が押し寄せ、貧困故に事実上の派遣徴兵に応じている人たちの実態が描かれます。病気1つで中流層から貧困層に転落、待っていたかのように中東へ行って仕事をしないかという電話。詳細は是非本書を読んでいただきたいのですがこの流れは衝撃でした。

これは決して他人事ではなく、日本でも同様のことが起きる可能性を示していると思います。TPP大筋合意が話題となり、農作物の関税などが取り沙汰されていますが医療費や保険に関してはなぜかほとんど取り上げられていませんね。日本でもここ最近は、いわゆる貧困ビジネスが話題になることもありますが、その実態はかなり深刻なものであるという認識をもたざるを得ません。本書はルポというだけあって固有名詞や具体的な場所、数字などが羅列され、説得力にあふれています。ちなみに続編に当たる『ルポ貧困大陸アメリカⅡ』も入手済みなのでいずれ紹介したいと思います。

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

関連記事
スポンサーサイト

この記事の関連グッズはこちら

Ranking

本・雑誌 | トラックバック(-) | コメント(0) | [EDIT]
<<フランスで同時多発テロ事件 | ホームへ | 訃報:作家・佐木隆三さん>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
| ホームへ |
SEO対策:ニュースSEO対策:日記SEO対策:将棋SEO対策:読書SEO対策:食べ物