岡本太郎『今日の芸術』光文社知恵の森文庫
2006.08.23(17:47)
岡本太郎というと、ぎょろっとした目を大きく開いて「なんだこれは!」「芸術は爆発だ!」のイメージが強いのですが、本書を読むとその裏側にある恐ろしく冷静で鋭い観察眼や思想があることがよく分かります。太郎氏は芸術とは創造であり、常に新しくなければならないと主張します。そしてそれは決してキレイなものでもなく、心地よいものでもなく、うまいものでもないといいます。
いつの間にかできあがっている「暗黙の了承」「当たり前の価値観や枠組み・とらわれ・先入観」(本文中では八の字符丁といっています)こういったものを徹底批判し、本当の自分をさらけ出し、芸術と向き合い、作り出すことに意義があると語ります。
個人的には第5章の中で図画教育に対する批判と提言が非常に興味深く、また鋭いなあと感心しました。たとえば、子どもがお日様の画を描くとき「○にちょんちょん」が太陽を表す、これがもう「型」になってしまっている。これは子どもが悪いと言うより「チャンとしたもの」を時間内に書くことを要求する手法に問題があるのではないか、という指摘は面白いと思いました。
太郎氏は閉鎖的な日本の伝統に対して厳しく批判をしますが、同時に非常に深い造詣も覗かせます。第6章ではこうした日本人の土台となっている部分を考察しているのですが、現代社会にも通じる痛烈な指摘があって思わずにやりとしています。
実は本書が出版されたのは1954年。もう52年も前のことです。さすがに言葉は古いものが多いのですが語っている内容は全く古さを感じさせません。これはホントにビックリします。そして難解な言葉ではなく平易な言葉やたとえで分かりやすく書かれており、太郎氏の強い熱意や考えがよく伝わってきます。
この夏ぜひ読んでおきたかった一冊だけに、いい内容で良かったとつくづく感じました。ぜひ多くの方に読んでいただきたい一冊です。
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