岡部昌幸『迷宮の美術史 名画贋作』青春新書インテリジェンス
2006.10.04(14:43)
世に名画名作といわれる美術作品は数多くあるのですが、それらについて回るモノが『贋作』であります。本書ではその贋作にスポットを当て、どのような経緯でその贋作が世に出て、どうなったかを紹介してあります。第1章では贋作の世界を代表する二人の人物の紹介、第2章で画商が作り上げた贋作事件の紹介、第3章で贋作に狙われ続けた画家達の紹介、第4章で真贋鑑定の問題点が紹介されています。
しかしこの贋作というモノは非常に複雑で奥の深い部分があり、一概に白黒付けられないところも有るみたいですね。単に欲に目がくらんでということもあれば、画商に対する復讐心なんてのもあるようです。
また、真作と鑑定して鑑定書を出してしまった人達は「自分の鑑定だけは間違いない」と主張するわけで真相を明らかにすることを非常に困難にしてしまうのですねえ。
また、過去に自分が書いた作品(真作)を「これは贋作だ」と主張し始める画家までいるのですからもう何が何だか分からなくなってきます。またレプリカやコピーといった贋作とは異なる領域での作品もありその線引きというのは必ずしも簡単にはいかないようです。
私たちが美術館で「へえ~」などと言ってありがたがって鑑賞している作品が実は全くの別人が書いた作品だった、なんてことが案外有るかもしれませんね。そうなると芸術とは何か、という根本的な問題も絡んできそうな気もします。
想像以上に奥が深く、興味深い贋作の世界を知りたいなら本書をお薦めします。文章も平易で読みやすく、有名な贋作事件から、鑑定方法、問題点など基本的なことがきちんと書かれていますので、読後の満足感は高いといえる一冊です。
迷宮の美術史 名画贋作

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